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年末調整の生命保険料控除、実際いくら返ってくるのか計算してみた

資産形成・投資

「ん? 全然返ってきてないじゃん……」

年末調整後、そう感じたのは一度や二度ではありません。貯蓄型保険、医療保険に入りまくっていた頃、事務室に提出する年末調整書類によくわからないまま書きまくっていた時期がありました。「最高40,000円」みたいな記載があって「え、そんなに返ってくるの?」と若干胸躍らせたものの、返ってきたのは数千円。なぜだろうと疑問だったものの、そのまま何も調べず蓋をしていました。

今では全て解約し、年末調整書類もスッキリしました。書く項目も、最低額5,000円でかけているiDeCoくらい。スッキリしすぎて逆に不安になってきますが、正直、今はこれで何も不都合はありません。

で、最近両学長のライブを聴いていると、この年末調整での返金について語られていました。「返ってくるのは小遣い程度」。そんな言葉を聴いて、昔の自分のことを思い出しました。

「これを機に、どれくらい返ってくるのかシミュレーションしてみよう」

そう思い立ち、この記事を書き始めました。

実際、あの頃の自分が「なぜ数千円しか返ってこなかったのか」、そして「上限まで攻めたら本当にお得なのか」を、計算してみます。

まず、勘違いしやすいポイント

「一般生命保険料控除・個人年金保険料控除・介護医療保険料控除、それぞれ上限4万円」という記載を見ると、つい「4万円払えば4万円戻ってくる」と思ってしまいますが、これは二重に誤解です。

⚠️上限4万円というのは「控除額」であって「戻ってくる金額」ではない。控除額はあくまで税金を計算するための所得から差し引かれる金額で、実際に戻るのは、そこに税率をかけた分だけ。
⚠️控除額が満額の4万円になるには、実は8万円以上の保険料を払う必要がある。控除額は下表の段階式で計算されるため、4万円払っても控除額は3万円にしかなりません。

所得税の生命保険料控除額(新制度・区分ごと)

年間支払保険料控除額
20,000円以下全額
20,001〜40,000円保険料×1/2+10,000円
40,001〜80,000円保険料×1/4+20,000円
80,000円超一律40,000円(上限)

出典:国税庁 No.1140 生命保険料控除

つまり、控除額をMAXの4万円にするには、その区分だけで年8万円以上(月6,700円以上)を払い続ける必要があります。「一般」「個人年金」「介護医療」の3区分すべてで満額を狙うなら、年間24万円(月2万円)の保険料が必要、ということになります。

住民税側も同じ考え方で段階式になっており、こちらは区分ごとの上限が2.8万円、3区分合計の上限は7万円です。

住民税の生命保険料控除額(新制度・区分ごと)

年間支払保険料控除額
12,000円以下全額
12,001〜32,000円保険料×1/2+6,000円
32,001〜56,000円保険料×1/4+14,000円
56,000円超一律28,000円(上限)

出典:春日井市:個人市・県民税の生命保険料控除

実際にシミュレーションしてみた

では3区分ともMAXの「40,000円×3=12万円」という想定で、どれくらい返ってくるのか検証してみます。実際に控除額の上限を満たすには、1区分あたり8万円、3区分で年間24万円(月2万円) の保険料が必要でした。

  • 所得税の控除額:40,000円×3区分=120,000円(上限)
  • 住民税の控除額:28,000円×3区分=84,000円だが、合計上限70,000円で頭打ち
所得税率所得税の軽減額住民税の軽減額(固定)合計
5%6,000円7,000円13,000円
10%12,000円7,000円19,000円
20%24,000円7,000円31,000円
33%39,600円7,000円46,600円

一般的な会社員・教員クラスの課税所得だと、所得税率は10〜20%あたりに収まることが多いはず。この場合、年間24万円払って戻ってくるのは19,000円〜31,000円。年間24万円の支出に対して、実質的な「回収率」は8〜13%程度。良くても「ちょっとしたお小遣い」の域を出ない、というのが数字で見た実態です。

そもそも3つの保険、必要?

で、控除額の計算とは別に、「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」それぞれについて、そもそも民間保険で備える必要性がどれくらいあるのか? 公的データで確認しておきます。

一般生命保険料(医療保険・死亡保険など)

日本の公的医療保険には「高額療養費制度」があり、1か月の医療費の自己負担には上限があります。2026年8月の制度改定後(令和8年8月〜令和9年7月)、年収約370万〜770万円の会社員であれば、月の上限はおおむね「85,800円+(医療費-286,000円)×1%」で、年収約370万円未満の区分なら月61,500円が上限です(直近12か月に3回以上高額療養費に該当した場合は、いずれの区分も44,400円まで軽減されます)。

出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」

つまり、「入院・手術で医療費が青天井にかかる」という不安に対しては、公的医療保険だけでかなりの部分がカバーされています。もちろん先進医療や差額ベッド代、収入減少分などは対象外なので「絶対に不要」とまでは言えませんが、少なくとも「医療費破産を防ぐための民間保険」という発想は、この上限額を知った上で、必要な保障額を冷静に見積もり直す価値はあります。

個人年金保険料

老後資金の準備手段として個人年金保険とNISAを比べる場合、金融庁が公表している長期・積立・分散投資の実績データが参考になります。1989年以降の実績で、国内・先進国・先進国以外の株式・債券に分散して20年間積立投資をした場合、100万円の元本が20年後には約182万〜283万円(年平均リターン約3.1%相当)になったというデータがあります。

出典:金融庁「資産形成に関する基礎知識」

一方、円建ての個人年金保険は「予定利率」が低く設定されているため、返戻率(払込総額に対する受取総額の割合)は多くの商品で100〜110%程度、年率換算では0.3〜0.6%程度にとどまるのが一般的とされています(この数字は各保険会社の商品案内をもとにした一般的な水準で、金融庁データのような公的な一次情報ではない点は留意してください)。

低リスク・元本保証を重視するなら個人年金保険にも一定の意味はありますが、「長期で老後資金を増やす」という目的であれば、NISAで低コストの投資信託を積み立てる方が、期待リターンの面では合理的、という比較ができます。個人的には、どうせ長期で考えるのであればNISAでOKかなぁというのが正直なところです。

介護医療保険料

公的介護保険の第1号被保険者(65歳以上)の保険料は、全国平均月額で制度開始時の2,911円(2000年度)から、2024〜2026年度(第9期)には6,225円まで上昇しています。少子高齢化により給付と負担のバランスが年々厳しくなっていることが、この推移からも見て取れます。

出典:日本経済新聞「介護保険料が最高の月6225円 65歳以上、2024〜26年度」、厚生労働省「介護保険の保険料(第1号被保険者)」

公的な仕組みですら保険料が上がり続け、財政的に厳しい舵取りを迫られている中、民間の介護保険がその不足分を安定的にカバーできるかというと、正直かなり不確実。保障内容も「要介護2以上」など条件が限定的な商品が多く、「保険料控除があるから」という理由だけで契約を続ける、または新規で入るのは、動機としては弱いというのが実態に近いと思います。

まとめ

⚠️「最高4万円」の表示は控除額であって、戻ってくる金額そのものではない
⚠️控除額を満額にするには、思っているよりずっと多くの保険料(1区分あたり年8万円)が必要
⚠️3区分満額を狙って年間24万円払っても、実際に戻ってくるのは1万円台〜3万円台程度(所得税率次第)
⚠️控えめな保険料であれば、戻ってくるのは文字通り数千円

生命保険料控除は、あくまで「すでに必要だと判断して入っている保険」のオマケ程度に捉えるのが実態に近く、これを主目的に保険へ加入したり、解約をためらったりするのは、正直なところ本末転倒だと思います。公的医療保険・公的介護保険の保障範囲や、NISAという選択肢も踏まえた上で、本当に必要な保障だけを選び取っていきたいところですね。

また、育児世代になると、学資保険を皮切りに、色々な保険を紹介される可能性があります。その時に、「生命保険料控除が使えてお得ですよ!」というセールストークに乗らないように、今回の計算で出した数字のリアルを知っておくことが、家族にとってのお守りになるかもしれませんね。

ではでは!

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